配偶者が知っておきたい相続税の控除

長年連れ添った配偶者が亡くなるということは、人生で最も悲しいことの一つですよね。
にわかには受け入れがたい現実に、涙すら出ないという人も多いでしょう。
不意に故人の思い出がよみがえった瞬間、堰を切ったように涙が溢れだして、体の半分を失ったかのような喪失感と悲しみに襲われることもあります。

しかし人が亡くなった際の日本の慣習や法律は、あまりにも手間がかかるものです。
まずは死亡診断書を取得して死亡届を官公庁に提出し、知人や親族の視線を浴びながら、葬儀や火葬を行わなくてはなりません。
周囲の目もありますのでそれなりにお金をかけた葬儀を行わざるを得ないことも多く、それだけでもとても大変なことです。
それだけでは終わりません。
葬儀や火葬が終わったら、今度は相続について法定相続人同士で話し合ったり、税務署や法務局などさまざまな場所で数多くの手続きをしたりしなければならないのです。
配偶者であるがゆえに、そういった数多くの手間をこなさなければならず、悲しみに暮れている暇もありませんよね。
今回の記事ではそういった配偶者の手間や負担を少しでも軽減させるために、相続の際に配偶者が必ず知っておきたい「相続税の控除」について解説します。

まず相続税と言うものは結論から言うと「遺産の総額が3600万円を超えていなければ申告も納税もしなくて良い」ものなのです。
つまり、よほどの資産を残して亡くなった被相続人でなければ、相続税の申告や納税は不必要なのです。
ではどうして、3600万円を超えなければ相続税が必要ないのでしょうか?
その理由となっているのが「基礎控除」です。

相続税の基礎控除は、3000万円と600万円×法定相続人の人数を足した金額に遺産総額が達していなければ、相続税の納税が控除されるというシステムです。
法定相続人が一人もいないと言うことは相続においてあり得ないことですので、実質的に3600万円が最低ラインになります。
法定相続人が2人なら4200万円、3人なら4800万円を超えなければ、相続税は必要ないのです。
さらにこの法定相続人の人数には、相続放棄した人もカウントすることができます。
まずは法定相続人の数を数えて基礎控除価格を割出し、それを遺産総額が超えていないかを確認しましょう。
参考HP:相続放棄は自分でできる?費用は?

もしも遺産総額が基礎控除価格を超えていた場合、次に考えるのは「配偶者控除」でしょう。
配偶者控除とは1億6千万円、もしくは配偶者の法定相続分の金額×課税価格のどちらか多い方の金額まで相続税がかからないという控除になります。
ここで言う課税総額とは、遺産総額から基礎控除や死亡保険などの非課税財産をマイナスした、実際に課税対象となる金額になります。
つまり億単位で莫大な資産を残していた被相続人でない限りは、基本的に配偶者は相続税がかからないのです。
もちろん配偶者控除は配偶者のみに適応される控除なので、他の法定相続人が利用することはできません。

被相続人と自分との間に未成年の子供がいる場合などには、未成年者控除も利用可能となります。
これはその未成年が二十歳になるまでの年数を10万円でかけた金額が控除されますので、子供が小さければ小さいほど、控除金額は多くなるのです。
被相続人の実子でなくとも未成年者控除は適応可能で、たとえば甥っ子が法定相続人に含まれていれば、その甥っ子にも適応されます。

法定相続人の中に障碍者がいる場合には、「障害者控除」も利用可能となります。
その障碍者が85歳になるまでの年数と10万円をかけた金額が控除されますので、これも未成年者控除と同様、障碍者が若ければ若いほど控除金額が高額になるのです。
万が一控除額が障害者本人の相続する金額を上回った場合には、その障碍者の扶養義務者の相続税から控除することも可能なケースもあります。
ただし障害者控除は障害者すべてに適応されるものではなく、特定の条件があります。
その条件次第では適応されないこともあり得るのですが、逆に控除額が2倍になることもありますので、判断基準をしっかりと確認しておきましょう。

最後に「数次相続控除」です。
これは亡くなった被相続人が生前に他の被相続人から相続で財産を取得していた場合、その際に課せられていた相続税額を計算して控除する仕組みです。
数次相続控除には少し複雑な計算が必要となりますので、該当する場合には税務署に問い合わせたり、税理士に相談したりするのがおすすめです。

配偶者が亡くなってしまうと、心身ともに弱ってしまいますよね。
そんなときにこのような税金の話をするのはとても嫌なことかもしれません。
しかし、そんなときだからこそ、少しでも故人の残した財産を大切にしながら相続をすすめるべきであるとも言えます。
相続において配偶者とは絶大な権利を持った存在です。
配偶者だからこそ、然るべき人に然るべき金額の遺産を分け与えられるよう、協議などでも指揮を執り、尽力しなければならないのです。
そういった意味でこのような相続税の各種控除は、全てしっかりと内容を把握することは難しくとも、どのような控除があるのか、その種類とざっくりとした内容は把握しておくべきでしょう。